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【多摩 労働問題】セクシャル・ハラスメントに準ずる行為?(労働裁判例紹介04)

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【多摩 労働問題】セクシャル・ハラスメントに準ずる行為?(労働裁判例紹介04)

【多摩 労働問題】セクシャル・ハラスメントに準ずる行為?(労働裁判例紹介04)

2022/02/09

労働裁判例紹介04【Y市教育委員会事件】

秋田地裁令和3年7月9日判決(労働経済判例速報NO.2461、24頁)

1.セクシュアル・ハラスメント

使用者は、労働者の安全に配慮する義務があり、同義務には、労働環境を安全に保つことが包含されます。

男女雇用機会均等法においても、労働者が、性的な言動により、就労環境を害されないように、事業主が防止措置を講ずることが義務付けられています。

そのような職場内の対策については、少しずつ浸透してきているように感じています。

他方、取引先などの第三者が、セクシュアル・ハラスメントの行為者となりうることも想定されており、セクシュアル・ハラスメントの防止のためには様々な要素を考慮する必要があります。

今回は、いわゆるスポーツ特待生の進学に対して事実上権限を持っていた高校教諭が、進学候補者であった生徒(中学生)の母親に対してセクシュアル・ハラスメントないしそれに準ずる行為を行ったという事案です。

どのような行為がセクシュアル・ハラスメントないしそれに準ずる行為と考えられたのでしょうか。

2.事案の概要

原告は、Q1高等学校の教員であり、レスリング部監督として高い指導実績を上げていました。

同高校への受験を志望していた生徒(中学生。「本件生徒」)は、レスリングにおいて一定の実績を上げていたところ、原告は、本件生徒の母親(「保護者女性」)に対して、「入試、部活等で話したいのですが、夕食しながらどうですか?」というLINEメッセージを送信し、Y市内の飲食店で保護者女性と食事をした後、駐車場に停車させていた自車内において保護者女性を抱き寄せてキスをし、その後に交際を求めた、ということでした。本件生徒は、偶然に原告と保護者女性のやり取りを知り、別の高校へ進学することを決めています。

Y市教育員会は、原告がLINEメッセージを送信した行為、Y市内の飲食店での食事から、交際を求めるまでの一連の行為を理由として、原告を懲戒免職処分としました。

この懲戒免職処分に裁量の逸脱又は濫用があり無効であるとして、原告が、同処分の取り消しを求めたのが本件です。

3.本件における判断

(1)本件の判断構造

本件は、公立学校の教師に対する懲戒処分を争っていますから、通常の事業者・労働者の争訟とは異なり、懲戒解雇処分という行政処分に対する取り消しの可否が問題になります。

そして、Y市教育委員会には、懲戒解雇処分を行うに当たって裁量が認められますから、裁判所としては、原告に対する懲戒解雇処分がY市教育委員会に認められた裁量を逸脱・濫用するものかどうかを判断することになります。

(2)本件においてY市教育委員会が問題とした事象

本件で原告が勤務していた高校は、部活動の実績がある生徒に対する前期選抜試験を行っていましたが、原告はレスリング部に入部させたい生徒について毎年4~6人程度リストアップしており、本件生徒以外の全員がこれまで前期選抜試験に合格していました。つまり、原告は、レスリングにおける部活動実績があることを前提に前期選抜試験を受験する生徒に関しては、事実上前期選抜試験の合否を決定できる立場にありました。

このことから、Y市教育委員会は、原告が保護者女性に対して優越的な地位にあり、これを利用してセクシュアルハラスメントを行ったこと、本件生徒が結局のところ進路変更を余儀なくされたことを指摘し、原告の行為が社会生活上の倫理はもとより、教育公務員に求められる倫理に反する行為であること、入学選抜試験の公平性・中立性に対する信頼を著しく損ねるものであるなどとして、懲戒解雇処分を決定しています。

(個人情報の不正な利用であるという点も、Y市教育委員会は指摘していますが、本稿では割愛します。)

(3)裁判所の判断

裁判所は、原告と保護者女性とのやり取りを詳細に認定したのちに、原告が本件生徒の前期選抜の合否を左右し得るという優越的立場にあったことから、保護者女性としては原告からの誘いや要求を明確に拒絶することが事実上困難な立場にあったと判示しています。

そして、このような状況は、「職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いる」のと極めて似通った状況であったと指摘されています。

結果として、Y1市教育委員会による懲戒解雇処分には、裁量権の逸脱・濫用はないとして、原告の請求を棄却しました。

4.まとめ

このように、保護者女性は、原告の部下などではありませんが、事実上原告が本件生徒の高校への合否を左右し得るという特殊な状況であったことから、原告の行為を職場におけるセクシュアル・ハラスメントと同視した処分がされました。

この事例は、前期選抜という特殊は合否判定試験について事実上影響を与えうる原告が引き起こしたものです。しかし、就職を希望する学生や中途採用志望者と人事担当者など、本件における原告と保護者女性との関係と類似した関係性は、一般企業においても十分に起こりうるものです。

会社としては、そのような状況が起こりうることを想定したうえで、従業員に対して優越的地位に基づいてセクシュアル・ハラスメントを行わないように伝える必要があるでしょう。

また、本件のような事態が起こってしまった場合の従業員の処分については、後に係争となった場合でも問題が無いように対応する必要があります。

当事務所では、そのような問題を経営者と伴走して解決していくサービスをご用意しています。【労働問題】【法務パートナー】

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