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【多摩 労働問題】そうはいっても、解雇できないんでしょ?(労働裁判例紹介03)

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【多摩 労働問題】そうはいっても、解雇できないんでしょ?

【多摩 労働問題】そうはいっても、解雇できないんでしょ?(労働裁判例紹介03)

2022/02/07

労働裁判例紹介03:Zemax Japan 事件

エンジニアに対する普通解雇が有効とされた例

1.初めに

労働者を雇用すると、解雇はできない。そのようなイメージを持っている方もおられます。

そのため、労働契約ではなく業務委託契約を締結して、仕事を任せていきたいという考え方もあることを以前ご説明しました(「業務委託であれば大丈夫?」)。

期間の定めのない労働契約について、使用者が一方的に解約する場合(労働者を解雇する場合)、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその解雇は無効となります(労働契約法16条)。

確かに、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でないような解雇で職を失ってしまうとすれば、労働者としては重大な問題ですから、このような規定は必要なものでしょう。

しかし、客観的に合理的な理由を欠いている、とは具体的にどういうことか、については裁判例の蓄積に委ねられています。

そして、裁判例においては、能力不足解雇の場合に、使用者が労働者に対して十分に改善の機会を与えていないとして、解雇を無効とする判決も多くあります。

解雇無効の場合の報道などのイメージから、解雇はできないという考えが培われていくものと思います。

確かに、解雇は簡単に有効と認められるものではないですが、今回は、解雇が有効となった事例を紹介することで、解雇が全く不可能なわけではないことをお知らせしたいと思います。

2.事案の概要

被告となったZemax Japan株式会社は、光学設計解析ソフトウェア等の専門的なソフトウェアの販売・テクニカルサポートを業務とする会社であり、米国所在の合同会社の子会社であるということです。

原告は、被告における唯一のエンジニアであり、顧客からの技術的な質問に対してメールで回答するテクニカルサポート業務などを担当していました。

(原告が雇用されるまでは、外国法人に技術上の質問を回答してもらっていたようです)

原告は平成28年10月3日に被告にける就労を開始し、同年12月末に試用期間が満了し、本採用されましたが、平成29年3月8日、被告は原告に対して解雇通知書を交付し、即日解雇する意思表示をしました。

3.本件での判断

判決では、原告の業務内容が詳細に認定されていますが、判決理由で特に取り上げられた点として、①原告の顧客の質問に対する回答の中には、英語サイトのリンク先やマニュアルの該当箇所を示すだけのものがあり、一部の顧客から不満が出ていたこと、②原告の回答件数が他国のエンジニアと比較して多くはないものであったことから、原告のテクニカルサポート業務の能力は、一定程度期待された能力を下回る状況であったとされています。

また、原告が担当したセミナ―の内容について、受講者から原告に対する不満が記載されているアンケートが提出されていたことや、英語について原告自身が具体的に改善を検討していたとは言えない(※筆者注:おそらく、取組みの質量が足りていなかったということを指摘しているのだと考えます)という点を指摘しています。

そして、使用者による改善の機会の提供に関しては、①原告が、被告代表者が工面したバディ制度(改善のために相談しやすく経験のある従業員を指名する)を積極的に活用しなかったこと、②テクニカルサポート業務の回答方法について、スクリーンショットを用いるように等の指示を受け、了解した旨回答しながらスクリーンショットを添付した回答を自ら作成する姿勢を示さなかったこと、③そのほか、原告が被告代表者からの改善のための質問に回答しなかったこと(多数回)を挙げ、被告代表者が、およそ原告が被告代表者の指示に従って業務を行う意図を有していないものと判断し、業務改善プランを提示せずに解雇をする方針に至ったことにもやむを得ない面があったとしています。

以上を主な理由として、本件においては解雇が有効であるという判断がされました。

4.ポイント

当該原告の認定された勤務態度はかなり問題があるといわざるを得ないものであり、解雇有効の判断は妥当なものでしょう。

しかし、仮に同じような労働者がある会社にいたとして、この事件の被告と同じように証拠を残しながら妥当な対応をすることは難しいと考えます。

この会社では、やり取りがほとんどメール(またはテキストベースのコミュニケーションツール)を介して行われていたようであり、その結果やり取りが詳細に認定されています。

その中で被告代表者が相当に筋道立てて親会社に報告を送付しており、その内容が立証の助けになったものと考えられます。

多くの親会社のない会社においては、社内で検討した過程のどの部分を裁判所に提示できる形で残しておくべきかについてまで気に掛けることは難しいのではないでしょうか。

当事務所では、そのような面からのアドバイスも行っております。【労働問題】

また、日常の業務において法務的な観点からサポートをすることも行っています。【法務パートナー】

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