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虎に翼、最終回の感想!

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虎に翼、最終回の感想!

虎に翼、最終回の感想!

2024/09/27

1.虎に翼

N H Kで放送されている朝の連続テレビ小説の2024年度前期「虎に翼」が本日最終回を迎えました。かなり話題になった作品ので作品の概要は紹介しませんが、日本で初めての女性弁護士の一人であり、初の女性裁判官となった方をモデルとしたドラマです。

法曹をテーマにしたテレビドラマの中には、(法律家の目から見れば)法律考証が行き届いておらず、ドラマの内容よりも法律・裁判に関する描写の不正確性が気になってしまう、ということは往々にしてあります。しかし、このドラマは、法律に関する考証が丁寧に行われており、初回から最終回まで気になる点がほとんどないまま視聴することができました。N H Kのドラマ制作の丁寧さが伝わる良い作品であったと思います。

また、実際の事件に着想を得た(あるいは実際の事件を基にした)事件が描かれることにより、戦前〜戦後の裁判史を垣間見ることができました。

2.虎に翼における家族関係

虎に翼においては、全ての個人が尊重される社会がテーマとして一貫して扱われており、そのことは、登場人物の家族関係の構築にも影響を与えました。同ドラマでは、戦前(昭和10年頃)から高度経済成長後の社会(昭和47年頃まで)が描写されますが、その間、脇役を含めた登場人物たちは、各個人の考えのもと、家族関係(もしくは家族関係類似の関係)を構築していくことになります。

これらの描写の中で、ある者は同性愛関係にあるパートナーとの生活を送り、ある者は自らを抑圧していた家族から解放される、といった経過を辿ります。

そのようなストーリーにおいて、主人公である寅子は、戦後知り合った航一と事実婚関係となることを選択します。寅子には、死別した夫との子である優未がおり、航一には、死別した妻との子である朋一、のどかがいます。

寅子は、大正3(1914)年生まれ、航一は、劇中はっきりとした描写はありませんが、1940年頃に、30代であったという説明がありましたので、寅子より5〜10歳程度上の年齢だと考えられます。

優未は、昭和18(1943)年生まれであり、優未が小学生6年生だった時期に朋一が大学生、のどかが高校生だったため、朋一は昭和9(1934)年頃、のどかは昭和12(1937)年頃の生まれであると考えられます。

3.最終回からみる相続関係

本日放送された虎に翼の最終回では、平成11(1999)年の各登場人物が描写されました。寅子一家についていえば、寅子は昭和59(1984)年に死去、航一(90〜95歳)は存命、子ども達3名も元気に活動している様子でした。優未(56歳)はいろいろな仕事の兼業を行うフリーランス、のどか(62歳)は、若い頃勤めていた銀行の仕事は辞職していると思われますが、夫の画家活動を支援しているようです。朋一(65歳)は、裁判官から転身した家具職人としての仕事を続けている様子です。

優未は、航一の家に引き続き居住しており、朋一とのどかは別の場所に居住していると考えられます。

 

私は、この最終回を見て、率直に言えば「航一が死亡した時に相続で揉めそうだな」と感じました。今回はこの点を考えてみたいと思います。

寅子と航一は、法的には婚姻関係を結んでいないですから、航一と優未、寅子と朋一・のどかとは法律的には親子の関係ではないことになります。そうすると、寅子が死亡した際には、その相続人は優未ひとり、航一が死亡した際は、その相続人は朋一・のどかとなると考えられます。

他方、仮に寅子と航一が法的に婚姻関係を結んでいたならば、おそらくそれぞれの子と養子縁組もしたと考えられます。そうすると、寅子死亡時の相続人は、航一・朋一・のどか・優未の4名、さらに航一死亡時の相続人は朋一・のどか・優未の3名となります。

劇中の設定では、寅子の遺産は朋一・のどかには相続されず、航一の遺産は優未には相続されない、ということになります。

もちろん、寅子と航一は法律家ですから、自己の死後の財産処理についてしっかりとした遺言を作成していたと推認されますが、ここでは、そのようなものがなかったとします。

 

4.相続の実態の推測

寅子や航一の財産状態はどういうものだったでしょうか。

劇中には説明がありませんが、寅子も航一も裁判官として定年まで勤め上げたと考えて良いでしょう。裁判官としては航一の方が職位が高かったかもしれませんが、俸給において大きな差がつくということは考えにくく、航一・寅子とも十分な給与・退職金を取得して定年退職したものと考えられます。定年退職後、それぞれ弁護士として活躍したかもしれませんが、ここではその点はないものとして考えます。

典型的な大きな財産として、不動産があります。寅子の父親(直言・1946年頃死亡)は、登戸に一軒家を所有していたものと考えられますが、登戸の一軒家は関係者が多いことから、寅子の生前どこかの段階で、その所有関係が整理・清算されているものと考えられ、寅子死亡時点では、登戸の一軒家に関して、寅子の持分は存在していないと考えられます。

他方、航一は、場所は明示されませんでしたが、都心にあるらしい一軒家を所有しているようです。この一軒家は、航一の父親の代には建っているようであり、航一は父からその所有権を相続していると考えられます。

上記から、寅子の遺産は裁判官時代の俸給を主たる原資とした預貯金等流動資産、航一の遺産は同様の預貯金等流動資産及び都心の一軒家、ということになりそうです。

それでは、航一死亡時にどうなるでしょうか。

航一は、平成11(1999)年時点では、老人ホームに入っているようですが、現役時代の上品な暮らしぶりから、おそらく相応に料金の高額な老人ホームに入っているものと思われます。また、相当に長寿であることから、航一の死亡時には、預貯金がそれなりに減ってしまっているのではないか、と考えます。他方、そのほかの財産である不動産は、都心にあるということもあり、地価の変動があったとしても一定の価値を保持したままである、ということになります。

航一の死亡時、法定相続人は朋一とのどかですから、減ってしまった預貯金と不動産とを二人で分配することになります。しかも、不動産には、事実上の妹である優未が居住しており、これを売却することが難しいという関係にあります。劇中では、朋一とのどかはそれぞれ自活できるだけの経済力を備えているという設定となっていますが、二人のうちどちらかでも、「遺産をあてにする」という心持ちがある場合は、遺産分割において厳しい交渉になりそうです。

また、優未は、最終回で描かれた様子から、経済的余裕があるようには伺われず、おそらく一軒家を出て住居費を負担して生活していくことは厳しいのではないかと推察されます。そうすると、一軒家は、優未が死亡までそこで生活することになり、一軒家の処分は非常に困難、ということになりそうです。

他方、優未にものどかにもおそらく子がおらず、朋一とその子ども1名との関係が良好であることから、いずれは一軒家の所有権は朋一の子に収斂していくと考えられます。

 

上記のような、分けられない遺産(一軒家)に価値があり、分けられる預金等が乏しい場合というのが、複数の相続人が揉めるパターンであると言えます。虎に翼のケースでは、その上、経済力の比較的乏しい(乏しそうな)法定相続人ではない関係者が、価値のある一軒家を独占的に使用しているという状態であり、各関係者が互いを尊重する対応を取らなければ、たちまち高葛藤の相続事案に発展しそうだな、と考えました。

 

上記のようなことを考えたのは、虎に翼の物語世界が精緻に作り込まれているからであり、とても夢中になった作品でした。制作者の皆さん、ありがとうございました。

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