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【労働 制度解説】副業・兼業ガイドライン(2)

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【労働 制度解説】副業・兼業ガイドライン(2)

【労働 制度解説】副業・兼業ガイドライン(2)

2022/05/07

【労働 制度解説】副業・兼業ガイドライン(2)

ガイドラインの解説記事その2

1.はじめに

今回は、前回の続きの解説を行っていきます。

2.企業の対応(1)基本的な考え方

ガイドラインでは、企業の対応の基本的な考え方として、労働者及び使用者との間に審議誠実の原則があることから、使用者及び労働者が負う付随義務を根拠に、①安全衛生配慮義務、②秘密保持義務、③競業避止義務、④誠実義務があることを指摘し、これらに支障をきたす場合には、副業・兼業を就業規則等で禁止または制限できるようにしておくことを勧めています。

そのうえで、原則として副業・兼業が認められることを前提に、副業・兼業を企業の側で規制する場合の理由・方法について説明がされています。

ガイドラインには、副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすような事情がなければ、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められるという言及があり、かなり踏み込んで、副業・兼業を認めることを促していると考えられます。

それでは、上記①から④までの付随義務について、これらに支障をきたす場合、とはどのようなことなのでしょうか。

ガイドライン内では具体的な例は挙げられているとは言えませんが簡単に説明すると、以下のようなことではないかと考えられます。

まず、①安全配慮義務については、労働者が副業・兼業を行うことにより、労働の全体量が多くなってしまうが、使用者がこれを把握しながら何ら配慮をしないために健康を害してしまうということが考えられます。このような状況を発生させないため、使用者としては、労働者の副業・兼業の状況を聞き取る仕組みを作ることによって、健康を害するような過重労働にならないように配慮すること、場合によっては長時間にわたる副業・兼業を禁止することを求められます。

次に、②秘密保持義務については、労働者が、特定の使用者の下で得た情報を他の使用者の下で漏洩するという場合が考えられますが、そのような恐れがある場合(研究職の社員が異業種の他社で同じく研究職として副業・兼業を行う場合など)は、これを就業規則等で禁止しておくことが考えられます。

また、③競業避止義務違反については、同業他社での副業・兼業が考えられ、④誠実義務違反(自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為)については、具体的には社会的に信用が著しく低い行為を副業・兼業とすること(ダフ屋行為や転売など)を就業規則等で禁止することが考えられるでしょう。

3.企業の対応(2)労働時間管理

労働基準法38条第1項において、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められており、厚生労働省の解釈においては、「事業場を異にする場合」とは、事業主を異にする場合も含むとされています。

このことから、副業・兼業が行われる場合において、労働時間の通算についてどのように考えるべきかが問題になります。

ア 労働時間の通算が必要になる場合

ガイドラインにおいては、そもそも副業・兼業での働き方に労基法が適用されない(独立事業主、経営等、使用従属関係がない場合)か、労基法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(管理監督者等、使用従属関係はあるが労基法上除外される場合)のいずれかであれば、労働時間の通算は行わなくてよいということが示されています。

その場合でも、過労等により業務に支障をきたさないようにする観点から、就業時間を申告により把握すること等を通じて就業期間が長時間にならないように配慮することが望ましいという点は指摘されています。

上記のような場合を除くと、労働時間の通算が行われることになります。

ここからが複雑なのですが、ガイドラインにおいては、労働基準法において労働時間について言及されている規定のうち、労働時間が通算して適用される規定と、通算して適用されない規定があると定めています。

通算して適用される規定は、法定労働時間(労基法32条)、時間外労働のうち、労働者個人ごとの時間外労働の上限を定める規定(労基法36条6項2号及び3号)については、労働時間を通算するとされています。すなわち、各労働者を働かせることができる上限の時間を設定した規定については、事業主の異なる事業場における労働時間を通算するということになります。

他方、各事業場において時間外労働をさせる場合に、その延長の上限を定める労働基準法36条1項の協定の運用については、異なる事業者についてこれを通算する必要はありません。また、休憩や休日、年次有給休暇の適用についても、労働時間の通算は行わなくてよいということです。

イ 副業・兼業の確認

上記の事業場間における労働時間の通算を行う上で、使用者は、労働者からの申告等により副業・兼業の有無・内容を確認する必要があります。

使用者としては、それらの確認のために、労働者が副業・兼業について届出を受ける制度を整えておく必要がある、とされています。

ウ 労働時間の通算の方法

副業・兼業を行う労働者を使用する使用者は、労基法38条1項の規定により、それぞれ、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要がある、とされています。労基法38条1項の解釈としては従前定められていたことですが、このような負担があるから使用者が副業・兼業を原則禁止としていた面もあるのですから、副業・兼業は禁止されないことを原則としたうえで、改めてこのような労働時間の管理を求められると、使用者としては負担感があるように思われます。

他方、他の使用者の事業場における労働時間の把握は、労働者からの申告等により把握する、という方法が明示されており、使用者としては労働者からの申告等が適正に行われているとうかがわれる状況においてはさらに労働者の他の使用者における労働時間を調査するまでの必要がないことがわかります。

二つの事業場における所定労働時間を通算し、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、時間的に後から労働契約を締結した使用者における、当該超える部分が時間外労働になります。「自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間」という書き方がわかりにくいですが、変形労働時間性などを使っている場合などに配慮しているに過ぎないのであって、自らの事業場において運用されている法定労働時間であると考えればよいです。

時間的に後から労働契約を締結した使用者は、すでに別の使用者と労働契約を結んでいる労働者と労働契約を結ぶのであるから、法定時間外労働が発生しやすくなるという不利益は甘受すべき、ということです。

各事業場における所定外労働時間については、自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とを、それらが行われる順に通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分の有無を確認することとされています。つまり、他の事業場で所定外労働を行ってきた場合には、これを申告してもらう必要があるということです。

自らの事業場で時間外労働となる時間は、自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とする必要がありますし、他の使用者の事業場における労働時間を含めて、時間外労働の法定の上限を遵守するよう労働時間を管理する必要があります。

このような処理は、各使用者に相当の負担になるように思われます。

なお、他の使用者の事業場における実労働時間の把握は、上記のような労働時間管理に必要な頻度で行えば足りるとされています。

エ 時間外労働の割増賃金の取扱い

時間外労働の割増賃金については、上記の方法で計算した労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自らが労働させた時間について、割増賃金を支払う必要があるということになります。

上記のウの労働時間の把握は、自らが労働させている時間のうち、どの時間に割増賃金を支払うべきかを把握する面があるということです。

オ 管理モデル

簡便な労働時間管理の方法として、管理モデルと称される方式が提案されています。

これはつまり、副業・兼業を開始する際に使用者間で、当該労働者に行わせる時間外労働の上限を(上限同士を足し合わせた場合に労働基準法の上限規制にかからない範囲で)決めておき、お互いがこの上限を超えない場合は他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要しないとする方式です。

このような方式であれば、使用者にとっては労働時間把握のための労力がそこまで高くはならないと考えられます。

他方で、労働者の労働時間の調整幅は少なくなってしまいますので、時間外労働が一定程度発生する職場においては利用しにくいと感じられると考えられます。

双方の事業場において、時間外労働を行わせる必要性がそこまで大きくない場合には有効に作用するのではないでしょうか。

ガイドラインによれば、このような管理モデル方式を採用し、自社の社員について、副業・兼業を行う場合の時間の上限を示している企業もあるようです。

4.おわりに

テキスト量からわかる通り、ガイドラインの最も重要なポイントが、上記の労働時間管理の点にあることはあきらかです。

採用難が続く場合は、副業人材の活用も視野に入りますが、労働時間管理については相当に複雑なことになります。

従って、実際には、副業人材を事業主として発注することにより、労働時間管理を行う必要がない状況を作ることが求められると考えられます。

しかし、事業主として活動してもらっていても、その実態が労働者と変わらないということであれば、問題となりやすいです。

活用の仕方についても、専門家の意見を参考にすることをお勧めします。(労働問題)(法務パートナー)(法律相談)

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