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【多摩 企業法務】(学校の)先生の残業代(労働裁判例紹介05-03)

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【多摩 企業法務】(学校の)先生の残業代(労働裁判例紹介05-03)

【多摩 企業法務】(学校の)先生の残業代(労働裁判例紹介05-03)

2022/02/22

【多摩 企業法務】(学校の)先生の残業代(労働裁判例紹介05-03)

埼玉県事件(続き 終わり)

1.はじめに

前回及び前々回の続きとして、今回も埼玉県事件(さいたま地裁令和3年10月1日判決・労働経済判例速報2468号3頁)を取り上げます。

原告の主張は、要約すれば

①給特法に定められた、労働基準法37条の適用を排除する旨の規定は、日常の時間外労働には妥当せず、したがって時間外労働に対する割増賃金が請求可能である。

②仮にそうでないとしても、給特法は労働基準法32条の適用を排除しておらず、小学校の校長には、原告が時間外労働を行っているにもかかわらずこれに対する軽減措置を取らなかった国家賠償法上の違法があり、国家賠償法上の損害賠償請求が可能である。

というものでした。

2.原告の各主張に対する裁判所の判断

それでは、原告の各主張に対し、裁判所はどのように判断したでしょうか。

まず、①の主張に対し、教員の職務の性質上、教員については一般労働者と同様に実労働時間による労働管理にはなじまないことなどから、一般労働者と同様の手量的案時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまないと判断し、そのことを前提とした給特法の定めは、教員のあらゆる時間外での業務に関して労働基準法37条の適用を排除しているとしています。つまり、原告らが主張した、給特法が労働基準法37条の適用を排除している対象が、一部のものに限られるという主張は認められませんでした。

そのため、原告の時間外労働に対する割増賃金の請求は認められませんでした。

確かに、原告の主張と、給特法の趣旨とはほとんど関連が無いように思われますし、この判断は妥当ではないかと考えます。

次に、②の主張に対し、裁判所は、給特法が労働基準法32条の適用を排除していないことはこれを認めましたが、教員の職務の性質上、厳密な時間管理を行うことは難しいため、教員の労働時間が労働基準法32条の制限を超過していたとしても、それだけでは校長について労働基準法32条違反に関する故意または過失があるとはいえず、国賠法上の違法は発生しないと判断しました。

他方、教員の労働時間が無限定に長くなってよいということではありませんから、特定の教員の所定勤務時間における勤務状況、時間外勤務等を行うに至った事情などを総合考慮して、校長の職務命令に基づく業務を行った時間が日常的に長時間にわたっているような場合には、校長について労働基準法32条に違反している状態の認識可能性があるため、これを是正する注意義務があり、これに反した場合には国賠法上の損害賠償責任を負うとしています。

そして、原告の勤務実態に基づきつつも、原告が校長の指揮命令に基づいて勤務時間外に従事した業務に要したおおよその時間を月ごとに概算するという方法で、労働基準法32条違反の認識可能性を判断しています。

(結論としては否定しています)

この部分、特に労働時間をおおよそ概算して、上席者の労働基準法32条違反の認識可能性を判断する部分については、異論もあると考えられますが、教員の労働時間について、どの部分が校長などの上司から命じられた労働時間であり、どの部分が自発的な準備等の活動であるのかについて厳密に判断できないという給特法の前提を考えると、ひとつのありうる立論であろうと考えます。

この点については、本件の控訴審やほかの裁判例において判断がされていく可能性があり、今後も注目されます。

3.裁判所の付言

裁判所としては、上記の論理構成から、原告の請求を棄却しました。しかし、本件訴訟に至った原告の勤務実態に鑑み、オピニオン訴訟としてこのような声を上げることについては理解を示した付言を判決に加えています。内容としては、実情として多くの教育職員が、学校長の職務命令などから一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況にあり、給特法は、もはや教育現場の実情に適合していないのではないかとの思いを抱かざるを得ず、この点の改善を切に望むということでした。

裁判所として、このような説示を行うことはめずらしく、裁判所において時間外労働の増加を問題視する姿勢が強いことがわかります。

教職員の場合は、給特法により明示的に労働基準法37条の適用が排除されていますが、当然ながら一般企業においては労働基準法37条の適用は排除されていません。したがって、実労働時間に従って算出された割増賃金以上の賃金を支払う必要があり、この点を怠ると、急に労働者から未払い残業代の請求が行われる、ということになります。このようなことがあっても慌てないために、日ごろから法律等の専門家に相談しておくことは極めて重要であり、当事務所はそのような内容の相談も受け付けています。

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