【多摩 企業法務】やっぱり行かなきゃダメですか(労働裁判例紹介08-02)
2022/03/24
【多摩 企業法務】やっぱり行かなきゃダメですか(労働裁判例紹介08-02)
東京地方裁判所令和3年9月28日判決:ロバート・ウォルターズ・ジャパン事件(労働経済判例速報2470号22頁)
1.裁判所の判断
(前回からの続きです)
裁判所は、被告の安全配慮義務違反について、被告や派遣先において、2020年3月当時、原告が通勤によって新型コロナウイルスに感染することを具体的に予見できたと認めることはできないというべきである、として被告には原告を在宅勤務させる義務を負っていなかったとしました。
また、被告は、派遣先会社に対し、原告の出勤時刻の繰り下げや在宅勤務の要望を伝え、出勤時刻の繰り下げや、派遣先と原告が在宅勤務について話し合う機会を実現しており、十分に安全配慮義務を果たしていると考えられるとしました。
2.この裁判例から考えられること
当該裁判例は一つの事例判断にすぎず、この裁判例をもって、在宅勤務を求める従業員についても、使用者が在宅勤務を認める義務はない、ということを判断することは難しいように思われます。
本件は、派遣会社が被告であり、派遣会社の従業員は、派遣先を就業場所として指定されることが通常であるところ、派遣会社が就業場所を派遣社員の自宅に変更するには、派遣先会社との合意が必要であり、従業員に在宅勤務をさせるにあたり、直接雇用されている従業員との関係とはその容易性が異なります。
また本件では、原告固有の(すなわち、持病があり、特に感染に気を付けなければならないなどの)在宅勤務を行う必要性は主張されておらず、原告の主張は、「およそ企業は、労働者の意に反する在宅勤務を求めてはならない」という内容に近いものに収束すると考えられます。そのような社会的に大きなインパクトを持つ結論を裁判所が認めることは相当にハードルが高いでしょう。
また、新型コロナウイルスに関する知見が蓄積した現在では、どのような安全配慮義務が会社に課されるかという点は個別に分析・検討する必要があります。
3.まとめ
上記の、新型コロナウイルスに対する対応のような最新論点についても、当事務所は検討を進めてきております。労務管理上のお悩みについて是非一度ご相談ください。(労働問題)(法務パートナー)
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