【多摩 労働紛争】アイドルは労働者か(労働裁判例紹介07-02)
2022/03/09
【多摩 労働紛争】アイドルは労働者か(労働裁判例紹介07-02)
労働裁判例紹介07-02 Hプロジェクト事件(東京地裁令和3年9月7日判決)
1.はじめに
前回に引き続き、アイドルの労働者性について判断した裁判例についてみていきます。
2.労働基準法上の労働者の判断基準
それでは、ある者が、ある使用者との関係で、労働基準法上の労働者とされるのはどのような場合でしょうか。
この点については、上記のような決まりに加えて、労働基準法上の労働者とされると、法定時間外労働に対する割増賃金など、他の労働基準法上の規定の適用がありますから、すでにそれなりの数の紛争が発生しており、労働基準法上の労働者とされる基準は様々な説明がされているところです。
有力な説明の一つとして、労働基準法研究会が昭和60年に出した報告において、「使用従属性の有無」すなわち、①使用者の指揮監督下で労働し、②労務対称性のある報酬を受け取る者に該当するかという枠組みで総合判断するというものがあります(荒木尚志「労働法」第4版53頁参照)。
そして、同研究会報告では、使用者の指揮監督下にあるかという点について、業務についての諾否の自由、業務遂行上の指揮監督の有無、拘束性の有無、代替性の有無(他のものが労務を提供することが認められているか否か)などから判断すべき、とされています。
さらに、報酬の労務対価性については、時間給を基礎としているなどの事情がある場合は、使用従属性を補強する、とされています。
さらに、同研究会報告では、労働者性の判断を補強する要素として、事業者性の有無、専属性の程度などを要素として挙げています。
実際の裁判においても、上記のような要素を関連付けて労働者性についての主張が行われました。
3.本件における労働者性判断
本件においては、原被告から様々な主張がされており、判決は事実関係について詳細に認定しています。しかし、労働基準法上の労働者性という点については、Zがアイドルグループのイベントについて、予定管理システム上で「参加」を選択して初めて、イベントへの参加を義務付けられるものであったとして、Zには、仕事に関する諾否の自由があったと認定し、ほぼそのことを理由に労働基準法上の労働者性を否定しています。
裁判官としてはその点が重要であると考えたのだとは推察しますが、その点のみで労働者性を否定するという判断は少し理由付けが少ないのではないかと感じられます。
また、被告側の関係者がZに対して、イベントへの参加を促すようなメッセージを送っていた点についても、イベントへの参加を強制されていたという評価は当たらない、とされています。
被告側が強い口調で参加を促している事実が認定されていますが、イベントに出ない予定である、というZの考えに対するものであると捉えられており、参加を促すこと自体が強制に当たるとは判断されていません。
(イベントの9割ほどには参加しているようです)
こうして、労働基準法上の労働者性がないと認定され、他の点についても審理されたのち、原告らの請求は棄却されています。
4.まとめ
上記のように、本件においては、タレントと芸能事務所との関係でタレントの労働基準法上の労働者性が否定されています。
しかしこれは一つの事例判断であり、実際の業務委託先に対する指揮監督等の実情に照らせば、労働者性が肯定されるような場面も多くあるように思われます。これらは、契約書の名称ではなく、実態で判断されますので、思わぬ賃金の未払いを指摘されることの内容、業務委託先との契約の段階から、専門家に相談されることをお勧めします。(労働問題)
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