【多摩 企業法務】本格的な引き抜き行為?(労働裁判例紹介06)
2022/02/24
【多摩 企業法務】本格的な引き抜き行為?(労働裁判例紹介06)
スタッフメイト南九州・アンドワーク事件
1.はじめに
従業員を雇用していると、独立の希望を伝えられることがあります。
そのような場合、経営者の皆様はどのように対応されるでしょうか。
内心寂しく思いつつも独立を応援される方が多いかもしれません。
しかし、取引先や自社のスタッフを連れて行ってしまうとなると、応援はできないという方がほとんどでしょう。
本日は、従業員が在職中に別会社を設立して行った引き抜き行為が違法として損害賠償請求が認められた裁判例をご紹介します(宮崎地方裁判所都城支部令和3年4月16日判決。労働経済判例速報2468号29頁)。
2.本件の概要
本件の原告は宮崎県に本店を有する労働者派遣事業等を行う会社です。原告の従業員であった被告は、原告に在職中に被告会社を設立しましたが、被告会社は労働者派遣事業等を目的とした会社です。
原告の主張に依れば、被告は、原告の在職中から、原告が顧客に対して派遣しているスタッフに対して、原告が独立することを応援しているなどと説明し、派遣スタッフにたいして、被告会社に移籍することを促し、また、原告の顧客(派遣先企業)に対しても、同様の説明をしていたということです。
このような行為により、現実に顧客が派遣元を切り替え、被告会社に労働者派遣を発注するようになったこと、派遣スタッフも一部が移籍してしまったことから、原告は売り上げから人件費等を控除した粗利を得られなかったとして、同額を損害賠償請求しました(そのほか、名誉棄損を原因とする損害賠償請求もありますが省略します)。
3.裁判所の判断
裁判所は、雇用契約を締結した従業員について、「従業員が行った引き抜きが単なる転職の勧誘を超え、社会的相当性を逸脱して極めて背信的な方法で行われた場合には、(引用者注:雇用契約に付随する)誠実義務違反となり、債務不履行又は不法行為責任を負う」とし、社会的相当性を逸脱した引き抜き行為であるかは、引き抜かれた従業員の当該会社における地位や引き抜かれた人数、従業員の引き抜きが会社に及ぼした影響、転職の勧誘に用いた方法、態様等の諸般の事情を総合して判断するとしました。
そして、裁判所は被告及び被告会社の行動に関する原告の主張を概ね認め、被告及び被告会社に対して損害賠償の支払い義務を認めました。
具体的な金額は、移籍したスタッフがもたらしていた粗利益の3か月分(約287万円)としました。
4.終わりに
従業員とのトラブルにより、顧客やスタッフを移されてしまい、裁判まで行ったのに結局300万円程度の賠償を受けるだけとなってしまった原告はたいへん気の毒だな、というのが私のこの裁判例に対する印象です。
裁判になってから、弁護士に依頼しようという経営者の方も多いですが、実際には、裁判になる前の段階でいろいろな対策を検討する必要があります。
トラブルの予防のためにも、普段から弁護士と相談できる関係を持っておくことは非常に重要です。(法務パートナー)
また、法律関係の業務を全く検討してきていないという場合でも、丸ごと弁護士に発注できますので、遠慮なくご相談ください。(法務受託)
従業員や元従業員とトラブルになってしまった場合は、お早めに弁護士に相談されることがよろしいかと思います。(労働問題)
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