【多摩 企業法務】やっぱり行かなきゃダメですか(労働裁判例紹介08-01)
2022/03/23
【多摩 企業法務】やっぱり行かなきゃダメですか(労働裁判例紹介08-01)
東京地方裁判所令和3年9月28日判決:ロバート・ウォルターズ・ジャパン事件(労働経済判例速報2470号22頁)
1.はじめに
新型コロナウイルスによる感染症の問題が日本でも現実のものとなってから、約2年が経過しています。
その間、新型コロナウイルスの性質が解明されてきて、一定の対策なども浸透してきたように考えられます。
しかしながら、企業の担当者の方は、従業員に安全な執務環境を提供するべく、各種努力を行っておられることと思います。
本日は、新型コロナウイルスによる感染症が日本においても流行し始めたころ、企業としてどのように従業員の安全に配慮していくか、という点に関する裁判例をご紹介します。
2.事案の概要
本日ご紹介するのは、派遣社員であった原告が、派遣会社である被告に対して、原告が新型コロナウイルスへの感染を懸念して在宅勤務を求めていたにもかかわらず、原告を派遣先会社に出社させたり、在宅勤務等を希望する原告を疎んで雇止めにした等の行為が不法行為にあたるとして、慰謝料450万円などを請求した事件です。
なお、原告が派遣社員として稼働していたのは2020年3月2日から同月31日の1か月間でした。
原告の職務内容は情報システム開発であり、賃金は時給5000円ということでした。
上記の条件から、原告はシステムエンジニアとして一定の技術のある方であることがうかがわれます。
原告と被告の間で交わされた労働契約においては、東京都内の派遣先会社が就業場所に指定されているものの、就業開始前に、通勤を通じて新型コロナウイルスに感染する不安を訴え、派遣先会社に対して出勤時刻をずらし、通勤時間の混雑時間帯を避けることができるようにしてほしいこと、当面の間在宅勤務としてもらえるようにしてほしいことを要請するよう求めました。
被告は原告の不安には理解を示しつつも、派遣先会社は少なくとも最初の数日間は、職場に慣れてもらうために原告に出勤してほしいと考えていると伝えました。
他方、被告は派遣先会社に働きかけ、在宅勤務や出勤時刻の繰り下げを検討するよう依頼しました。派遣先会社は、結局のところ、勤務初日である3月2日は、午前10時に出勤してもらいたいこと、その際に原告とあって在宅勤務について話し合うこととしました。
結局のところ、派遣先会社は、原告が午前10時に出勤することを認め、3月10日からは在宅勤務を許可したため、原告は同日から在宅勤務を行うこととなりました。
原告は、在宅勤務中始業時刻を3時間繰り上げて午前7時とし、その分終業時刻も繰り上げて午後3時30分としました。派遣先会社はこれを問題視し、3月16日に原告の在宅勤務を終了させるよう被告に伝えました。
結局、被告は、3月16日にそれら派遣先会社の指摘を原告に伝えたうえで、3月19日に原告に対し、原告の労働者派遣契約を更新しないことを伝えました。
原告は、被告に対し、在宅勤務を求めていたにもかかわらず、原告を出勤させたことが、被告の安全配慮義務に反すると主張しました。
(そのほかにも、雇止めの無効などを争っていますがこの記事では省略します。)
3.まとめ
上記の事実関係ですと、原告が少し自分勝手に就業時刻などをとらえていたようにも読み取れますが、そのことは裁判所の判断には特に影響を与えていません。
次回の記事で、裁判所の判断について説明していきます。
上記の、新型コロナウイルスに対する対応のような最新論点についても、当事務所は検討を進めてきております。労務管理上のお悩みについて是非一度ご相談ください。(労働問題)(法律相談)
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